(1)観測地点およびエリアについて (2)観測原理について (3)観測機器について
海洋短波レーダ(HFレーダ:周波数24.515MHz)の設置位置を示します。 本システムは、2局以上のレーダで計測を行うため、扇形の電波照射範囲の重なる部分が解析可能エリアとなります。
@大阪湾の流況を観測する海洋短波レーダの位置と観測範囲を示します。
【垂水局】兵庫県神戸市垂水区平磯地先 座標 北緯 34°37′41.89″ 東経 135°04′25.43″ 【堺 局】大阪府堺市西区築港新町地先 座標 北緯 34°35′40.75″ 東経 135°24′13.03″
A紀伊水道の流況を観測する海洋短波レーダの位置と観測範囲を示します。
【湊 局】和歌山県和歌山市湊地先 座標 北緯 34°13′50.97″ 東経 135°06′23.33″ 【徳 島 局】徳島県徳島市川内町旭野地先 座標 北緯 34°05′48.72″ 東経 134°36′18.18″ 【阿 南 局】徳島県阿南市那賀川町上福井地先 座標 北緯 33°57′04.44″ 東経 134°41′37.02″
海洋短波レーダは陸上の機器より電波を発信させ、その反射エコー(ドップラーエコー)を受信・処理し、2台以上のレーダ局の解析結果データを合成する事によって、海洋の表層流況(流向・流速)を広範囲かつ面的に取得する事ができるリモートセンシング技術を利用した観測機器です。 観測範囲は陸上に設置されたレーダ局から約1.5Km〜50Kmで、1.5Kmメッシュのデータ取得が可能となります。
■観測原理について 陸上に設置したアンテナから海上に向けて短波(HF)帯24.5MHzや超短波(VHF)帯41.9MHzの電波を照射すると、電波の波長の半分の長さを持ち、レーダビームと同方向に伝播する海面波から強い信号が返ってきます。これはブラッグ共鳴散乱機構(図1)により、海面で反射された電波の位相と、隣の海面波で反射された電波の位相とが一致するためです。海面で反射され戻ってきた受信信号を周波数解析するとドップラースペクトル(図2)が得られます。
■流れ計測原理 図2はHF帯のレーダで観測したドップラースペクトルです。周波数の+0.505Hzと−0.505Hz付近に大きなピークがみられます。これは1次散乱ピークと呼ばれ、レーダ波と共鳴散乱を起こす海面波(HF帯、24.5MHzのレーダでは波長約6m)によるものです。海面波は、自身が進む速さ(波長によって決まる位相速度)と、海面波が乗っている表層流速を合わせた速度で移動しています。そのため1次散乱ピークの位置からドップラーシフト量(海面波の移動速度)を調べれば、レーダ波と共鳴する海面波の位相速度はわかっているので、レーダビーム視線方向の表層流速を知ることができます。
1つのレーダは、レーダ局に近づく方向または遠ざかる方向、すなわちビーム視線方向の表層流速を計測します。そのため、図3のように離して設置した2台(複数台)のレーダで計測したビーム視線方向の流速を合成することにより、対象海域の表層流ベクトルを観測することができます。算出された表層流の観測相当水深は理論上HF帯で約0.5m、VHF帯で約0.3mです。
大阪湾、紀伊水道の海洋短波レーダの観測機器の諸元を示します。垂水局、堺局、湊局はタイプ1を採用し、徳島局、阿南局は、タイプ2を採用しています。
徳島局 阿南局
【流況データ解析局】神戸港湾空港技術調査事務所内